【おすすめ短編小説】「約束」石田衣良 大切なひとを失った悲しみと生きるすべてのひとへ【あらすじ感想】

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「約束」石田衣良

親友を目の前で亡くした少年、不登校の少年が出会った不思議な老人、事故で片足をなくして以来心を閉ざしてしまった兄との絆――。大きな悲しみを乗り越え、もう一度前を向いて歩き出す決意をした人々の再生を描いた、心温まる感動作品集。by Amazon

 

幼馴染との突然の別れ

幼馴染の小学4年、カンタとヨウジ。

いつまでもふたりの仲が続くと思っていた矢先、不意に別れは訪れる。

カンタの目標であり憧れであり自慢であり夢でもあった幼馴染ヨウジが通り魔に殺された。

その日から何を食べても砂の味しかしない。

ふと気づくと自分自身を傷つけてしまう自傷行為を繰り返してしまう。

ヨウジのいない世界に生きる意味を見出だせないカンタ。

台風吹き荒れる真夜中、抱えきれない喪失感に死に場所を彷徨い歩くカンタの前にヨウジが現れた。

ふたりはある約束を交わす。

その約束は、カンタに生きる理由をもたらした。

身近なひとの死を抱え生きるということ

知人の死は、自分のなかのどこかに穴をあける。

身近であればあるほどその穴は大きい。

関わりあった記憶が現在進行形から過去形に変わり思い出になることは「なる」という自然な流れでなく「強いられる」という大きな負荷を与える。

いくつになってもその負荷はキツく、まして少年が当事者だとしたら計り知れない。

本編は、その計り知れなさを描写しつつ、ふたりの約束を物語の希望にかえて、締めくくられる。

それはヨウジに憧れたカンタが、

死をもってヨウジのそばにいくことを願うことなく、

カンタで在り続け生き続けることでヨウジをそばに感じることができるよう、

悲しみと寄り添いながら生きる人間の生を肯定する著者のささやかな提案のように感じた。

その提案から再度見つめ直す悲しみや、

喪失のぶんだけ深く大きな穴は、亡くなった人がまた自分のなかに訪れることができる通り道なのかもしれない。

だから、いまを確かに生きることで、亡くなったひとが見られなかった景色を見せてあげられる。

それだけで十分に生きようと思えてくる。

少しだけ見方を変える。解釈を変える。

これは生きているひとにしかできない明日を生きるための技術だ。

物語は、その技術、方法論を教えてくれる。

 

 

「約束」目次

  • 約束
  • 青いエグジット
  • 天国のベル
  • 冬のライダー
  • 夕日へ続く道
  • ひとり桜
  • ハートストーン

他の短編のあらすじは下記記事で紹介しております。

【おすすめ短編小説】石田衣良「約束」【全編あらすじと感想】

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