
川崎フロンターレでトップレベルのチームを作り、名古屋グランパスを率いて一年でJ1昇格を達成した風間監督の指導法。
伝え方について焦点を当てた本著だが、伝えるためにあえて伝えないという冒頭からその発想の違いを披露するなど、伝えることほ本質を考えさせてくれます。
組織論、指導方法、サッカーだけでなく、あらゆるスポーツやビジネスなどに応用できる原理から考える思考法が学べます。
強いていえはサッカーやってる時に読みたかった。日本のサッカー偏差値を上げてくれる指導者として今後も応援しております。
目次
プロフィール 風間八宏
風間 八宏は、静岡県出身の元サッカー選手、サッカー指導者。現役時代のポジションはミッドフィールダー。by Wikipedia
サッカー偏差値を確実に上げてくれる監督
風間氏の凄さをはっきりと感じたのは、サッカー解説です。
ほかの解説者のような観客の応援する目線も踏まえた解説ではなく、このプレーがなぜいいか、なぜダメか、ゲームそのものはどのような状況かを的確な表現に感心しました。
さらに、観ている人に常に新しい視点を与えてくれる解説により試合終了後には「サッカー偏差値」が上がった気がしました。
そんな風間氏の解説には、ゲームそのものの満足ではない、知的な満足を得た記憶があります。
自身もサッカーをしていた身としては、この人に教わったら確実にレベルが上がっていただろう自分を想像すると、そんな体験をした人を羨ましく思うと同時に、その経験が日本サッカーを底上げしてくれるはずだと楽しみにさせてくれる指導者です。
例えば、小さい頃ボールを止める技術である、トラップについて風間氏は
「ボールの音がしないように止めてごらん」
「ボールに触れる面積をなるべく少なく、点で止めてごらん」
と声を掛けるそうです。
その言葉だけでトラップ技術において意識することや身体の扱い方が変わります。
これは小さい頃に教わっていればどれほど上手くなれたか。
こんな一例が、ところどころに散りばめられている本著を一読するだけでもサッカー偏差値を上げてくれます。
全ての仕事人に役立つ考え方 「遠いものから見ろ。速いものから見ろ」
「遠いものから見ろ。速いものから見ろ」
風間八宏氏はこの考え方を選手に植えつけます。
この考え方をはじめに教わっていれば、その後のサッカー観や実践的な技術の成長スピードが変わった気がします。
これはつまり、相手のゴールまたはその付近から情報を得ていき、そこに至るまで速く最短のプレーを意識しようということです。
この考え方に沿ってプレーするとしたら、中央の相手センターバックを攻略すればシュートチャンスになることが誰にでもわかる事実であり、そこに対し常に崩すプレーを考えたうえでプレーする。
安易にサイドから攻める傾向にある日本サッカーへの警鐘とも取れる「遠いものから見ろ。」
そしてその最短のプレーとしてはワンタッチでパスすることが一つにあり、一番速いプレーでもあります。
このプレーが描けて実行できる身体の使い方をすること。
もちろんそのプレーは相手にとって一番嫌なプレーなので、最優先で防がれます。
しかし、その一番速いプレーが意識出来ていれば2番3番と選択肢は豊富に用意出来ているので、結果的に最適なプレーができますし、最悪のプレーとしてボールは取られる可能性は下げられます。
もし子供の頃に、この合理的な考え方が身についていれば、その後の成長も変わった気がします。
大人になったいまではビジネスにも言い得ている考え方だなととても腹落ちした考え方でした。
伝えるための準備。2つの大原則
まず、風間氏の指導理念ともりいう原則の2つが、自責志向と目標の確認です。
自責志向は、
人のせいにしない、物のせいにしないことで、現状は常に自分に原因があるように考える。
自分に向き合うことで課題解決や克服のはじめの行動に進むことができます。
目標の確認は、
指導者から常に発信し選手が受け入れる一方向の関係でなく、まず選手自身がどのような状態になりたいのかを自分の言葉で指導者に開示することで、指導する側とされる側が互いに同じ目標を目指す関係になることができます。
同じ目標を共有することで指導も明確になり、選手も納得して受け入れることができます。
伝えるためにあえて伝えない
風間氏が川崎フロンターレに就任した当初は、あえて伝えなかったそうです。
何を伝えなかったかというと、例えば、プロ選手である自覚や自身の課題克服への取り組み姿勢があります。
全体でのウォーミングアップをせず練習に入ることで、プロ選手なら身体を作ってから練習に参加することを言葉でなくスケジュールで暗に伝え、全体練習後の個人練習時間を作ることで自分自身に向き合う時間を作らせました。
言葉で、ウォーミングアップをしてから参加することや、個人練習に手取り足取り教えていくことでは選手が自発的に取り組むことがなく、頭の中は変わることはありません。
まず状況を作り出して、選手に、考えさせる。気づかせてやるように仕向けることが指導者の仕事だと氏はいいます。
もう一つ、川崎フロンターレで、取り組んだことの大きな方向性に「ボールを取られるな」というメッセージを発したことが指導として特徴的です。
ボールを取られないこと、つまり主導権を常に持ち、攻めるサッカーをしようという方向性を一言で伝えていきました。
では守備はどうするの?ボールをもし取られたらどうするの?という疑問が残る言葉かもしれません。
しかし氏は当初はこの言葉だけを伝え、「ボールを取られなければ守備はいらない」という極論とも言える発想のもと、守備についてではなく、まず攻撃について考えさせるよう選手の思考に強く訴えました。
実際に一年目は守備に重点を置いた戦術練習はしなかったそうです。
これも伝えるために伝えないの一例です。
何かを大きく変えるために全てを言葉で伝えるのではなく、大事な一点を強く伝えることはどんな分野のコミュニケーションでも役に立つ手法ではないでしょうか。
また実際にこのメッセージは極論めいた発言ではなく、点を取られるときはボールを悪い形で取られるケースからが多いという経験則から根拠のある発言をしているそうです。
点を取られるときは、ボールを保持しているのにチャレンジをせず、逃げの姿勢のときにボールは失われ失点に至る状況に陥るそうです。
つまり、攻撃的にボールを保持することで、守備の時間も減らすことができますし、もし取られた場合も失点にすぐには繋がらない形で守備に切り替えることができます。
サッカーの原理原則に基づいた地に足のついた発想だからこそ大胆に訴え、選手もついてくることができているのだと思います。
また、一点に絞ることの効用で想像できることとしては、ボールを取られないことを意識する練習において、守備役の選手はいます。
守備役の選手はどんどんボールまわしが上手くなる周りのレベルに引き上げられるように守備もうまくなります。
つまり、守備を切り捨ててるのではなく大事な一点を意識することで、ほかの大事な要素も実は改善されていく様子が想像でき、面白いなと感じました。
【まとめ】 伝えたい相手が聞き入れる姿勢か見極めてから伝える
風間氏の伝え方において、あえて伝えないことで、相手に気づかせ暗に伝えることができるという手法を紹介しました。
これは、つまり、
You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.
馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない
イギリスのことわざと同じ考え方なのかなと思いました。
相手がそれを欲している時にしか血肉にはならないことを、風間氏は熟知しており、相手が欲しがる状態や環境を作ることから始めたのでしょう。
その後、考え極めたサッカー観を伝えていく。選手の吸収が違うことは容易に想像できます。
いかに伝えるかに試行錯誤をすることはもちろん大切ですが、
いかに伝えずに、相手が聞こうとする姿勢にさせるかが
伝えることのはじめの一歩なのだと感じました。
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