きょう、 生まれたひとの言葉

【Kindleおすすめ漫画】千年万年りんごの子  妻を神様から守る夫の一世一代の愛

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あらすじ

親を知らない夫。りんごと育った妻。夫婦は、りんごの村の禁忌を破った。――雪深いりんごの国に婿入りした雪之丞(ゆきのじょう)。昭和の激動から離れ、北の家族と静かに巡る四季は親を知らない彼の中になにかを降り積もらせてゆく。それは冬、妻の朝日(あさひ)が寝込んだ日。雪之丞の行動が、りんごの村に衝撃を与えた。りんごの時間が動き出す、田中相 初連載作!

りんごの禁忌、雪国のアダムとイブの物語

あらすじにもあるりんごの禁忌とは、夫婦が暮らす村に祀られている「おぼすな様」の神木に実ったりんごを、雪之丞が朝日に食べさせてしまったことから始まります。

その村には「おぼすな様」に既婚の娘を捧げる風習があり、近年は村人自らその風習を絶ち、誰も神木に近付こうともしなかった。それを雪之丞が知らずも「おぼすな様」に朝日を捧げてしまうことに。

期日は1年後の祀り日。髪や爪が急激に伸びたり、身体が少し小さくなっていったりと朝日の姿は日に日に変化していきます。

この村に来て、これまでの疎外感や家族というものに諦観を決めていた雪之丞の心の雪が溶け出した矢先、溶かしてくれたキッカケを与えてくれた朝日がいなくなってしまうかもしれない。雪之丞の心は強く何かを決意しました。

禁忌、神様に立ち向かう雪之丞の夫婦愛は、アダムとイブのオマージュが物語の背景にある「離別」のテーマを強く浮き立たせているようでした。

猫のマメコがなくなるシーンが叙情的、田中相の描く余白

先述の雪之丞の心は強く何かを決意した心象の流れには、この村の人々や家族のつながりが強く影響しています。

雪之丞がこれまでに抱えていた孤独感を新しい家族によって違う形に変化していきます。

誰しも孤独感はあるでしょうが、その寂しさと寄り添いながら、互いにその寂しさを理解しながら、誰もが他者とつながっています。孤独であることを誰かと共有出来たときに、そのつながりはより強く感じられるのかもしれません。

そんなシーンが、さらっと描かれる本作の著者の田中氏の描き方は個人的にはとても惹かれました。

例えば、家族の一員である猫のマメコがなくなるシーンには、猫の習性である死の直前にひと目を離れることが描かれ、14年間も家族だったマメコがいなくなります。

少し前までに雪之丞や甥っ子とマメコの体温を抱きしめながら家族のつながりを温度で確かめていた象徴のマメコが、途端に姿を消し、雪之丞の仕事場であるりんご園で息を引き取っていました。

その姿を朝日と見た二人のやりとりのなかに「りんごの子」というフレーズがあります。生きとし生けるものはすべて土に帰り、この土地ならみなりんごに生まれ変わるというフレーズです。

そんなやり取りを受け、雪之丞が小さな頃からたまに見ていた、ひとり小舟を漕ぐ夢は見なくなったとあるように、猫の死がつながりを強く結びつかせるシーンの叙情感は、強く言葉に発さなくとも伝わってくるものがありました。

喪失の叙情感に胸にきた方には、短編「ファトマの第四庭園」もおすすめです。

【おすすめ短編漫画】「地上はポケットの中の庭」田中相 全編あらすじと感想

吹き出しにするでもない小さな言葉が魅力

by cmoa

上記の画像は、猫のマメコをみんなで抱きしめるシーンですが、これらのコマのなかに吹き出しでなく「小さく発せられる言葉」があります。田中氏の作品にはこの「小さく発せられる言葉」多くあります。

それらが吹き出しのセリフ以外にも登場人物の心象や関係性を理解したり楽しめます。日常的な会話の感覚がこのスタイルによりより日常たらしめいているのもしれません。

それが、このコマのあとにあるマメコの最後のシーンとのギャップにもつながり、強く際立つのかもしれません。

Kindleや試し読みサイトのご紹介

作者 田中相氏について

良い作品を知ると、次に知りたくあるのはその作者という人も多いかと思います。田中氏を知ることができる情報を少し探してみたので紹介します。

今あなたが知るべき漫画家・田中相とは、誰なのか

田中氏の作家になるまでの経緯がインタビューでまとめられています。

 

この次におすすめする本・作品など

田中氏がおすすめする作品などを紹介している記事です。作者のルーツが知ることができるとより作品を楽しめるかもしれません。

【選書サービス】作家・クリエイターが「おすすめ」する本リストから「おすすめ」します。

先述の田中氏の短編集の紹介記事です。各短編どれも田中氏の世界観が楽しめる作品です。

【おすすめ短編漫画】「地上はポケットの中の庭」田中相 全編あらすじと感想

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