目次
「夜のコンクリート」にある「懐かしさ」と記憶という「SF」
町田洋さんの4編からなる短編集。どの編にも通じるのは、「懐かしさ」という幼少や青年のときに出会った思い出です。あの頃の思い出やその時に感じた心の動きが、町田洋さん描く「SF」が散文的に散りばめられた世界観のなかに蘇ります。
夜のコンクリート 町田洋
建物も眠る深夜3時の短編
不眠が続く男。同僚が近所で酔いつぶれていたので泊めることになり、連れ添いでいた同僚の知人も一緒に。その知人は不思議な力があり建物の声が聞こえると。建物に耳を澄ます深夜3時。
不眠が続く男が同僚の知人から「深夜3時から明け方まで建物も眠る」聞いたあとにベランダから見た夜明け前の街並みのシーンは誰もが同じ時間の街並みに感じた街全体が眠っているあの感じが蘇ってきました。男がそれを目にした後の少し眠れそうな柔らかい雰囲気が印象的です。
夏休みの町 町田洋
夏休みの懐かしさが蘇る短編
夏休み。青年はバーベキューをするため、山の上で戦闘機と老人を見つけた。老人は過去に宇宙人にとらわれた友人を取り戻す計画をたて、青年は協力することに。宇宙人にとらわれた者は自分の心地の良い世界の中で生き続けるそう。その世界を見たとき青年は気づく。
個人的な感覚ですが、学生の夏休みは長く、永遠に続くような錯覚を覚えていました。あの頃の感覚が入道雲のように広がった物語の世界観に懐かしさを感じるとともに、老人との出会いという「SF」に突然夏休みが終わりを迎えていく寂しさが襲ってきます。夏休みに出来た思い出やイメージは確かに誰の心のなかにあることを思い出させてくれる物語でした。
青いサイダー 町田洋
子供の頃に頼りにしていたイメージが蘇る短編
小学生の少女は友達が出来ず、いつも空想の「島」をイメージして遊んでいた。その「島」は喋り彼女の友達でもある。彼女が暮らす団地の屋上に仙人と呼ばれいつも空を見上げている周囲から怪しまれてるおじさんがいた。彼女とおじさんが出会った時、「島」が。
「島」を少女の友達とされている設定に少し難しく感じたのですが、誰もが幼少の頃描いていた世界観やその世界にいた友達やキャラクターが彼女にとっては「島」であったと思うと、もう思い出すことも見ることもできないイメージがあったとことの寂しさや輝きみたいなものの微かな風が吹くような短編でした。
発泡酒 町田洋
若い時に言った言葉は発泡酒と似ている短編
「音楽を作ることは俺の全てだ」あの頃友人が言った言葉は、確かにあの頃の自分の心に響いた。大人になって久しぶりに会ったその友人がもうそんな言葉のかけらもなくとも。言葉と発泡酒は似ている。
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