
https://youtu.be/VikVW3NCQyU
目次
あらすじ 風立ちぬの制作期間のジブリを密着
映画「風立ちぬ」の制作期間から完成までのジブリの内側を撮影したドキュメンタリー。宮崎駿やプロデューサー鈴木敏夫などを中心にジブリとは何か、ものづくりとは?それを維持させるビジネスとは何かが垣間見ることができます。
感想 ジブリは夢のような場所であり狂気めいた場所でもある
タイトルでもある通り、ジブリは夢を具現化し作品にする夢のような場所であり、少し言い方に語弊もありますが、その夢に駆られてしまった人々の狂気めいた場所である。というのが鑑賞後の感想でした。
ジブリでは、宮崎駿氏の圧倒的な才能とその才能を具現化してくれるアニメーターという光景が日常です。
しかし、その才能自体は非日常的な存在でもあり、それを日常にしていく過程は感動もあれば辛苦も色々あります。
例えば、
宮崎駿氏は脚本を書かず、絵コンテを作ります。それも製作中にまだ結末は描けておらず、絵コンテを描き続けるのと同時に作品は作られていきます。
結末も一度では決まらず、最後の最後にあの結末に変更されたことが伺え、それは氏の内側にある葛藤や迷いからの決断があったことが見られます。
また絵コンテを全て描き終わると、アニメーターの方々が一気に形にしていく様子を宮崎駿氏が見て「みんな終わらせに言ってるな」と頼もしさと寂しさがないまぜになった言葉を発したことからも非日常が日常になっていくことへの寂しさというか、夢を作っているのに夢が終わっていくような言葉として聞こえました。
もうひとつ。
ものづくりはその作品が売れなければ次の作品を作ることが出来ません。
ビジネスとしての利益は最低条件でもあり、命題です。いかに売るか。
宮崎駿の才能が結晶化されたものを多くの人に届けるという側面をプロデューサーである鈴木敏夫氏が中心に担います。
作品の制作納期の調整やグッズの販売状況、新作グッズの開発。売るという行為により数字を作ることが求められるシーンは組織を続けることの緊張感が伝わってきます。
夢であり続けるジブリ
ジブリと言えば宮崎駿と誰もが声にすると思いますが、ジブリの成り立ちにおいて欠かせない存在はあと2人、プロデューサーの鈴木敏夫氏と高畑勲氏です。
この2人の存在があってこそのいまの宮崎駿でありジブリが出来上がっていきました。
そしてもうひとつ欠かせない存在は、彼らの夢を作品化していくアニメーターの方々です。
映画ではアニメーターの方々が映る時間は少ないかもしれませんが、スタジオの奥に座る宮崎駿氏の席に行くまでに多くのアニメーターが黙々と作品を作っており、彼らの存在なくして作品が形になることはないのだということがひしひしと伝わってきます。
作成時の打ち合わせや、完成後の祝福など、みんなで作品を囲むシーンに多くの方の力で一つの作品が出来ているのだと実感できます。
夢はつまり狂気でもある
夢を具現化することはそれ相応の労力が必要ですし力量が常に試されます。
それは傍目から見れば狂気すら感じさせる光景であり、そんな狂気のさなかにいる人々の辛苦はジブリにももちろんあります。
全クリエイターが抱える矛盾
「風立ちぬ」の題材は、飛行機設計を仕事にする男の空への憧れと戦争の時代に飛行機を作ることの「矛盾」が描かれています。
自分の大好きなものが人を殺める存在でもある。
ただ良いものを作りたい気持ちと、それを作ることは誰かを傷つけることが共存しているその「矛盾性」に作り手は苦しめられます。
宮崎駿氏はこの「矛盾」は、その時代の主人公だけが抱える「矛盾」ではなく、全クリエイターが抱える「矛盾」だとも劇中に語っています。
自身も飛行機が好きで、いくつも作品として描いてきたアニメ自身にも誰かを傷つける可能性を含んでいる矛盾があると。
ブラックなユーモアを効かせる彼の言葉を借りるなら
「アニメーターは呪われている」
と夢を描いた瞬間に狂気の呪縛から解かれることはないと語りながらも作品を作り1日の終わりを迎えます。東京は武蔵野に広がる夕焼けを見ながら、そんな一日を終えていく彼の後ろ姿に、偉大な作り手としての憧れと同時に才能という狂気を抱えた寂しさが映っていた気がしました。
宮崎駿の世界を作る人々
宮崎駿の夢は多くの方を引き寄せますが、同時に去っていく人もいます。
「求められるレベルの高さに身も心も疲弊してい夢の場所から去ることを選ぶ人もいる」
とアニメーターのスタッフさんが話しているシーンはジブリにも日常はあるのだと感じさせます。
息子 宮崎吾朗について
宮崎駿氏には同じように監督として「ゲド戦記や」「コクリコ坂」を作った息子の宮崎吾朗氏がいます。
彼の制作の様子も撮影されており、ある打ち合わせのシーンに制作が難航している様子が伺えます。
吾朗氏の語り口はある意味ジブリの狂気の一端を思わせる部分として個人的には見ていました。
その様子は、少し目も潤んでおり、心内にある想いを言葉にしているようでもありますが、「個人」として言葉にできない葛藤を精一杯なんとか「仕事人」として語っているように見え、これ以上誰かがひとつ不用意な発言をしたら全てが崩れそうな緊張感すらありました。
そんな張り詰めた空気のなか、最後に担当プロデューサーと吾朗氏の話し合いを見かねた鈴木敏夫氏が
「悪いのは全部おれだ」
と責任を全て請け負う言葉には、
その場をしのぐでも本心を取り繕うでもなく、過去から現在までのジブリの狂気に対する言葉とも取れました。
恐ろしいほどの才能をビジネスにして経済活動をまわすことの異常さを鈴木敏夫氏は自覚しつつ、それでもまた明日という日常を迎える。これはこれで狂気だよなと感じました。
監督 砂田麻美について
これを映画にした監督の砂田麻美氏しいてはそれを許可したジブリも含め、モノづくりに対する真摯な姿勢やある種の畏敬のようなものがあってこそ、ここまで映すことができたのかなと思いました。
砂田麻美氏は過去の作品に「エンディングノート」という実父の最期の時間を切り取った映画があります。
人間が真剣に生きている姿は映画そのものだなと思わせる力量と被写体のありのままを映す視線が当作品同様、監督の特徴です。
次の映画・作品など
【砂田麻美監督作品】
「エンディングノート」 実父の最期の時間を切り取った映画
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