【おすすめ短編小説】「とかげ」 吉本ばなな 秘密を共有することでふたりはより深くなる【あらすじ感想】

吉本ばなな著

「とかげ」

希望とまでいかないけれど確かな肯定の物語

精神科医の彼と、「とかげ」と彼に呼ばれるその彼女。

不意にプロポーズを口にした彼に対し、彼女の返事はない。

返事にかえて彼女が口にしたのは、悲しい過去とその後の秘密。

真夜中にふたりは成田山に向かいながら、悲しい過去を打ち明け合うことで、互いが強く惹かれる理由に気づく。

幼少期の暗い過去をいまでも抱える二人の、それでもいまを明日を生きていく、希望とまではいかなけれど確かな肯定の物語。

ふたりでいる理由は秘密を共有するほど増える

個人的な経験から述べると、現実は小説よりも奇なりなんて奇をてらってるとしか言えないような現実を生きている。物語に値する悲しい過去はない。それでむしろ良かったと思っているのだけれど。

たいした過去を持たないとしても、誰かを見つけてしまった直感は未だに鮮明だし、惹かれていた理由にあとになって気づかされることもある。

それは自分の内にある秘密に値しないようなコンプレックスなんかのジメジメした感情を打ち明けたり、共有したりすることで一層の気づきを得る。

希望とはいかなくても、肯定されるだけで、きょうも明日も生きていける。

そう思える確かな力をもらっている。

ふたりでいることの理由は、秘密の共有によってより増えていく。

精神科医が見せる少年のような心象のギャップ

精神科医の彼が、自身の仕事に対し語る場面。患者の内面に寄り添う、技術的に言えばシンクロするという共感を通して、患者の肯定感を高めるカウンセリング手法は時に、「ひとあたり」のように他者のエネルギーによって自身にダメージを追うケースもある。そうならないよう、適度な距離感を取りながらカウンセリングを計ることが彼の生業だ。

そんな彼でも、恋愛のさなかにみせる少年のような心象のギャップもひとつの読みどころ。

 

他の短編のあらすじは下記記事で紹介しております。

http://books365.biz/b_yoshimoto_tokage/

 

 

 

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「ゼンマイシキ夫婦」 あなたは何のために誰のゼンマイをまわすのか?

FOXムービー プレミアム 短編映画祭 2014 優秀賞作品「ゼンマイシキ夫婦」

FOXムービー プレミアム 短編映画祭 2014
優秀賞作品「ゼンマイシキ夫婦」
監督:森ガキ侑大
平凡な毎日をすごす夫婦の愛は少しずつ冷めていた。二人の背中には、決して自分では回す事ができないゼンマイがついている。自分のゼンマイは相手にまわしてもらうしかない。何の為に、相手のゼンマイをまわすのか?
夫婦や愛のあり方に触れる、新しいファンタジー。by You Tube

ゼンマイが愛を可視化させる

夫婦の背中にはゼンマイがついている。

ひとりではまわせない互いのゼンマイを、時折まわしあうことで生活は続いていける。

ゼンマイはつまり命であり存在そのものであり、ゼンマイをまわすことは互いの存在への愛を示し、そして時にその愛が試される行為といえる。

試されるとは、ゼンマイをまわす行為という日常に埋もれそうな愛を試されるということ。

つまり愛がなくなると、ゼンマイはまわされない。

ゼンマイがまわされないことがどういうことか分かってはいるけれど、まわせない。

目に見えない愛が、ゼンマイという存在によって可視化される。

ゼンマイがいつ止まるのかわからないけれど、もうすぐ止まることはわかっている。

なぜならもう少しまわすことができたことを誰よりも自分がわかっているから。

その時、止まりそうなゼンマイは、存在の限りなさも同時に可視化させる。

もうすぐ止まる。もうすぐやってきてしまう未来を思うことで、埋もれそうな愛の在り処に気づく。

鑑賞後、

「オマエはゼンマイをまわしてるか?」

自問自答をしていた。

 

【おすすめ短編小説】「突然ノックの音が」 ~嘘の国~ 嘘が教える一つの真実【あらすじ感想】

「突然ノックの音が 」 エトガル ケレット を拝読。

イスラエルを代表する人気作家による驚きと切なさとウィットに満ちた38篇。人の言葉をしゃべる金魚。疲れ果て た神様の本音。ままならぬセックスと愛犬の失踪。噓つき男が受けた報い。チーズ抜きのチーズバーガー。そして突然のテロ――。軽やかなユーモアと鋭い人間観察、そこはかとない悲しみが同居する、個性あふれる掌篇集。映画監督としても活躍する著者による、フランク・オコナー賞最終候補作。by Amazon

嘘つきなロビーがある日、嘘の国と出会う

今回の短編は「嘘の国」。

嘘つきなロビーがある日、夢の中で、昔ついた嘘のエピソードの続きに出会う。

母に買い物を頼まれたロビーは、途中でアイスクリームを買ってしまい、お釣りの小銭を石の下に隠す。母には前歯の欠けた赤毛の男の子にぶん殴られ取られたと嘘をつく。

夢の中で母はガムを買ってくれとせがむ。小銭を探すロビーに「あの石の下にまだあるだろう」と探してくるよう言う。

夢から覚めたロビーは、小さい頃に小銭を隠した、あの石の下に行く。

石をどけると、小銭はなかったが、穴がある。その穴に手をいれると・・・。

穴の中に迷い込んだロビーが出会ったのは、昔自分がついた嘘につかった人や動物だった。

「君は誰?」目の前に立っている赤毛に聞いた。

「おまえの最初の嘘だよ」

前足しかない犬が興奮してこちらにやってくる。車に轢かれて骨盤から後ろがなくなった犬の嘘を思い出す。

その傍には両腕のない老人が寄り添っていた。この老人は自分がついた嘘の人物ではない。どうやら誰かの嘘の人物だった。

名前をイゴールというその老人は

ロビーがついた嘘の犬と一緒にいることができ孤独ではなくなったと

ロビーに感謝の言葉を伝える。

現実に戻ると、ロビーは人々が信じる程の大げさで悲しい嘘をつくのをやめ、嘘をつくとしてもせめて肯定的な嘘をつくように心がけ、そして次第に嘘をつくこともやめた。

嘘が教えてくれる1つの真実

大人になったロビーは、たまたま同僚ナターシャが会社を休む口実を耳にする。

「叔父のイゴールが心臓発作で倒れたの・・・」

ロビーは昔穴の中で出会ったイゴールを思い出し、彼女をあの場所に連れて行くと・・・。

ロビーとナターシャが嘘の国で見つけた真実で幕を閉じる。

 

嘘と現実がパラレルに存在する世界。もちろんそれこそ「嘘」なのだけれど、嘘だからこそ語ることができる真実があるような気がする。

なぜひとが嘘をつくときは、大げさで悲しくネガティブな嘘をつくのか。

なぜ肯定的な嘘をつくことを選ばず、選んでも次第に嘘自体をやめてしまうのか。

そして、嘘をつく自分や嘘をつかれた他者に共通してあるのは、

その嘘を「信じる」ということ。

嘘はもちろん嘘だけれども、その嘘を信じたという事実は真実であること。

嘘をつくことで真実はもうひとつできる不思議。

人間がこれまでもこれからもずっと付き合っていく「嘘」に対する付き合い方を考えさせられ教えられた気がする短編。

 

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【おすすめ漫画】町田くんの世界 「他人に優しくすること」が見せてくれる世界の美しさ【あらすじ感想】

アナログで不器用、

勉強もできなくて、

運動神経もない町田くん

町田くんが得意と言われることはこれといってない。

それでも町田くんはみんなに好かれ、町田くんもみんなが好き。

なぜだろう。

それは町田くんが、

人がただただ好きで、自分の愛情を他人にも惜しみなく注げるから。

関わった人はみな好意と尊敬を抱く。

優しい人なんてたくさんいるのに、なぜ町田くんなの?

それにはまず、優しさについて考えてみる。

優しさというのは、得意なことや才能と言われることはないかもしれない。

誰かが誰かを紹介する際によく聞く
あの人は優しい人、なんて言われる人はたくさんいる。

優しいという言葉には、手垢がついてしまい、

本来の優しさがないがしろにされることがある。

 

町田くんが見せる愛情や優しさは

強くまっすぐだ。

その優しさは、手垢がとれ、本来の優しさの美しさを見せてくれる。

世界は本当は美しいのだ。そう思わせるほど。

どうしてこうも町田くんが見る世界は美しいのか。

 

本作は、

人類愛というのか愛情に溢れた主人公の町田くんが、

その愛情と優しさを世界に注ぐ。

端的にいうと、

それだけなのだけれど、

それだけでいいと思える。

 

 

町田くんの弟が、最近知らないおじいさんと仲良くなった事を町田くんは知る。

事情を確かめようとおじいさんの家を尋ねると、

どうやら怪しい方でなく、ただただ子供が好きなおじいさんだった。

昔は近所にそんなおじいさんがいたけれども、

最近は、知らない大人と子供が互いにふれ合う機会はなくなっている。

いまは、昭和の時代にあった近所付き合いが減り、

社会で子供を育てるような空気はもはや稀有だ。

そんな現在に、町田くんはこれからも弟や妹がおじいさんと遊べるように、

ひとつの工夫で、互いに現代の空気のなかでも、ふれ合える解決策を見出す。

「君は本当に人の心を掴むのが上手いなぁ」

解決策を見たおじいさんは、一瞬町田くんのことを、

世間の空気に機転を利かせる上手な子だと思ったけれども

すぐに思い直し、

「いや、違うか。君は本当に人が好きなんだね」

と町田くんの発送の機転でなく、

ただ人が好きで何かしてあげたいという動機に感心する。

町田くんが与える愛情や優しさの対象は、親しい人だけに留まらない。

他人に優しい人。

これが手垢が洗い流された優しさの無垢な姿だと思う。

他人とは、見ず知らずの一期一会な人とでもいうのか。

つまり、自分とは関係がないと思ってしまう人。

これはとても個人的な判断基準が多分に含まれるが、

もし、ひとり街中ですれ違ったある人に、

ある対応をするかどうかの逡巡をさせられることがあった時、どう対応するだろうか?

例えば、

自転車をドミノ倒ししてしまった人にどう対応するか?

道が分からなそうな人にどう対応するか?

そもそも対応する必要性を感じるかどうかもある。

あの人は困っている。どうすれば解決できそうか?

問題への気づきと、解決への対策までが想像できるか?

そして、自分がその答えを、

自らの意志で、

自分を知っている人が誰も見ていない状況で

実行できるか?

自分のことを知るひとがいない状況で、

知らないひとに優しくできるか。

そこには、

億劫だったり恥ずかしかったり、

無下にされたり、うまく助けることができなかったり、

実行しないで済ませる瞬間がいくらでもある。

これはつまり自分の優しさが試される瞬間だ。

町田くんが世間で言われる優しさとの違いは、ここにある。

他人にただただ優しくできる。

気後れも恐れも介せず、他人に関わる。

人一倍、ひとの心の傷に気づき、

自分ができることのなかで少しでも癒やそうと試みる。

マザーテレサは、

愛情の反対は無関心である、

といった。

人一倍、他人に関心を持つ町田くんの世界は笑顔があふれる。

どうしてこうも町田くんが見る世界は美しいのか。

他人を含めた多くの人の笑顔の中心に町田くんはいる。

そして、ひとが好きであること。

ひとが好きであれば、ひとが織りなす社会、しいては世界を好きでいられる。

つまり、町田くんの世界は「好き」で占められているのだ。

笑顔と好きで囲まれた相思相愛の世界。

そんな世界が美しくないわけがない。

 

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彼女が彼から教わる大切なこと マイインターンを観て

素直であること、可愛がられる人であること

妻が観たいというから観ることになった。

妻も知人に勧められて観ることにしたのだとか。

余談だが、妻は人に勧められた物事を取り入れることが自分より多い。

自分と彼女を比べると、おそらく

勧められる機会が多いことと、

素直に受け入れることができる性格の違いが理由だと思う。

そもそも勧められることが多いということが、

すでに素直さによるものが大きいのではとも考える。

勧めたくなる、伝えたくなるのは、

相手が受け入れてくれる雰囲気がなければなかなか難しい。

その雰囲気が彼女には自分より多くある。

勧められることは、大きくは可愛がられることのひとつでもないか。

可愛がられるひとを羨ましく思いつつ、少しは可愛がられる人になっていければとも思う。

さて、レンタル店にて棚を覗くと、すべて貸出中だった。

改めて、別の日に再訪すると1本だけあった。

自分は、この映画が観たいというよりか、彼女が喜ぶ顔が見たいのだ。

迷わず借りることにして自宅鑑賞。

わたしを救ってくれたのは、40歳年上の“新人(インターン)”
『プラダを着た悪魔』で、恋に仕事に奮闘しながらファッション業界でキャリアアップし­ていく主人公を演じ、世界中の女性から共感を集めたアン・ハサウェイ。あれから9年、­最新作でアンが演じるのは、ファッションサイトのCEO。『プラダ~』の主人公のその­後かのような、全てを手に入れた彼女の新たな出会いと試練を描く話題作が、ついに日本­にやって来る。
舞台はニューヨーク。華やかなファッション業界に身を置き、プライベートも充実してい­るジュールス。そんな彼女の部下に会社の福祉事業として、シニア・インターンのベンが­雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールスだが、やがて彼の心の­こもった仕事ぶりと的確な助言を頼りにするようになる。そんな時、ジュールスは仕事と­プライベートの両方で思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られる──。

起業から急成長を続ける多忙な女性CEOの部下に、

齢70の男性がシニアインターンとして配属される。

性別、文化、世代の違いから、はじめは疎ましく思う女性は、

誰にでも好かれ仕事でも成果を出す男性に次第に心を開いていく。

仕事とは、会社とは、家族とは、

人生の多くを占めるそれらに、人は時間と愛情をいかに注げばいいのか。

上司と部下から、友人へと変化する二人の関係とともに、

「大切なことは何か」を教えてくれる映画。

高齢者が持つ付加価値

Eコマース会社が急成長を遂げたり、

女性のCEOが活躍したり、

現在のアメリカのビジネスシーンが伺えるのと同時に、

雇用環境のいち側面が映されているのではないか。

映画の主軸であるシニアインターンは、

先進国における雇用問題を解決する施策のひとつだと思う。

日本でも、ハンバーガー店が高齢者を採用するなど、

高齢者の雇用環境が変化してきている。

高齢者の採用は、企業の社会的責任としての活動だけでなく、

業務上の経験値や、年齢を重ねることでしか出せない柔和な印象など

スキルや人柄などによる、高齢者にしか出せない付加価値がある。

この付加価値がストーリーの価値にもつながっている。

正しいことを心がける

インターンの男性は会社に馴染み、成果を上げていくなか、

WEBの事業会社において自身もWEBに慣れていくため、

Facebookの登録を試み、偶然その手ほどきをする女性CEO。

プロフィールに記載する質問。

座右の銘は?

“You’re never wrong for doing the right thing.”

“正しい行いは迷わずやれ”(字幕)

“正しいことを心がける”(日本語)

男性の紳士的な態度が集約される言葉だ。

意訳のニュアンスで少し印象も変わるが、ここでは日本語版の

“正しいことを心がける”

として受け取る。

彼と行動をともにし始めた女性CEOはちょうど同じ時期、

株主から別の人をCEOにすることを提案されており、

会社を築いた自身の存在価値と

家族との時間を作ることができない母としての存在価値に

新しいCEOを据える決断に思い悩む。

先に挙げた部下の老紳士の好きな言葉である

“正しいことを心がける”

“You’re never wrong for doing the right thing.”

この言葉は、そばにいる彼女にも影響を与える指針になっていく。

つまり、彼の生き方がまわりの人々の生き方すら変えていくのだ。

その様子は、

性別、文化、世代の違いを超える、

人間の生き様というのか、本質的な問題に対するヒントを示してくれる。

正しいことを心がけるにはまず、何が正しいのかを考える必要がある。

正しさとは何か?

この問いが

大人になることであらゆる物事が複雑に絡まっていく人生において、

自分にとって大切なことは何かを整理させていく。

それは決して万人が思う正しさではないかもしれない。

しかし、本人の心の内から思える正しさとして、突き動かしてくれる。

老紳士のインターンを部下にする女性CEO。

ビジネスとしての上下関係こそあれど、

人間的、本質的な関係においては、

彼女が彼のインターンだったのかなと

鑑賞後のすがすがしさに思った。

そして自分は妻の人間性に惹かれながら、

きょうもインターンのように、自分たちの人生において大切なことを教わっている。

「きみはいい子」 この世界で生きていくための大切な宿題

「きみはいい子」

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

桜が一本、頼りなく植わっている桜ヶ丘小学校を中心に、

子供や大人に隔てなく、

家族への憎しみや他人への愛情を通して、

ひとと関わることの怖さや尊さを物語る。

 

 

幼児虐待や学級崩壊といった問題を通して愛について描いた中脇初枝の小説を基に、『そ­このみにて光輝く』などの呉美保監督が映画化したヒューマンドラマ。学級崩壊をさせて­しまう新米教師、親からの虐待を受け自身も子供を虐待する母親、家族を失い一人で暮ら­す老人といった老若男女が、現実と葛藤しながらも生きていく姿を映す。出演は、『軽蔑­』などの高良健吾や『そして父になる』などの尾野真千子をはじめ、池脇千鶴、高橋和也­ら。奥深いストーリーと共に、実力ある俳優たちの演技合戦が楽しめる。
(C) 2015「きみはいい子」製作委員会
作品情報:http://www.cinematoday.jp/movie/T0019303
公式サイト:http://iiko-movie.com
配給:アークエンタテインメント

懐かしく、怖い。

懐かしいという言葉が温かい言葉に感じていた自分には、

この映画によって、痛く冷えた言葉であることも思い出した。

ここにいる人々は、

映画の中の登場人物といったフィルターを通り越して、

その懐かしさでもって僕らの胸を刺してくる。

直接でも間接的でも、

この人たちがいた状況や心象に似た気持ちを抱いたことがない人はいないのではないか?

少なくとも自分には、痛々しい懐かしさ、寒々しい懐かしさを覚えながら見ていた。

例えば

理不尽に怒られること

親の顔色を伺うこと

謝ることでその場をやり過ごすこと

身体的特徴や生理現象でクラスでのポジションが変わること

声の大きい人が優位に反対は劣位になること

これらに言えることは

他人によって否応なしに自分と周囲の関係を決定づけられる瞬間がある

ということだと思う。

それは時に怖く、辛く、痛いものだ。

恐怖映画が死を思わせる描写によって怖さを描くとしたら、

この映画は生きることそのものの辛さを描いた怖さというのか。

生きること、他者と共生していくことの怖さが描かれている。

途中、何度も目を背けたくなったのは、

普段はその怖さから目を背けていることの表れだ。

過去に子どもだったとして、

未来に親になるとして老人になるとして、

多かれ少なかれ、この怖さが訪れていた、または訪れる可能性があることを思う。

その可能性は同時に、

被害者でなく加害者として、

怖さを受ける側でなく与える側になってしまう可能性も含み、さらに思い戸惑う。

 

「他者」と関わることの怖さを

当人だけで乗り越えることが出来ないこともあるとき、どうすれば乗り越えることができるのか?

ひとつの答えとして示してくれるのは、

これもまた他者による力が大きいということ。

他者によって受けた疲れ痛み辛さを癒すのもまた他者であるということ。

象徴的なワンシーンがある。

教師がクラスをまとめることに疲れ帰宅すると、甥っ子が、頑張れ、とギュッと抱きしめるシーン。

教師はこの時の、

抱きしめられることで感じた不思議な気持ちを感じてほしくて、

クラスの生徒たちにある宿題を出す。

 

それは、家族に抱きしめてもらうこと。

 

できない、恥ずかしいと言っていた生徒たち。

翌日のクラスには、

宿題をしてきた生徒たちの幸せな表情と抱きしめられた不思議な気持ちで満ちていた。

不思議な気持ちについてみんなで言葉にしていくクラスには、

一瞬ではあるけれども、空気がひとつにまとまっていた。

抱きしめられること

優しくされること

愛されること

それは子供はもちろん、大人でさえも同じように

人の心を癒す力がある。

みな誰かに優しく愛されたい。

その気持ちを同じように自分以外の人に与えてあげてほしい。

教師は、問題も正解もない人が生きていくうえで最も大切な宿題を生徒に残したと思う。

 

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

誰かが誰かを傷つけても

誰かが誰かを癒やす世界が、きょうもそして明日もやってくる。

 

 

 

映画 「あん」 ひとはただ、この世界を見るために聞くために生まれてきたとしたら

映画 「あん」を観賞

本題ではないが、

まず、なぜ観たいと思ったのか?

映画や本の世界に入る前に、少し考えてみることはないだろうか?

自分の興味や関心の理由を探ることは、自分の思考というか志向に気付ける。それは面白いことだと思う。

例えば、本屋に立ち寄って、本棚を前に気になる本を探す。その本に手が伸びる理由を考えると、いまの自分の心境や欲しがっている感覚のようなものに気付ける。

本よりも自分自身が読める。

本屋にはそんな体験がある。映画館にもCDショップにも同じ体験があるのではないか?それが面白いと思う。
ということで、本題の映画「あん」へもどろう。

はじめにまず予告編を観たときに感じたことを思い出すと、

テーマである、どら焼きの「あん」を作っているシーン

「らい」患者である主人公の徳江さんが、桜かなにかの木々にうっとりしながら見上げているシーン

主題歌である秦基博の歌声に、魅かれた。

丹念に何かを作ること

自分の知らない社会的弱者がここに描かれていること

けれど、社会的弱者が必ずしも心まで貧しいわけではないこと。

それらが観たかったのだと思う。

『殯(もがり)の森』などの河瀬直美が樹木希林を主演に迎え、元ハンセン病患者の老女­が尊厳を失わず生きようとする姿を丁寧に紡ぐ人間ドラマ。樹木が演じるおいしい粒あん­を作る謎多き女性と、どら焼き店の店主や店を訪れる女子中学生の人間模様が描かれる。­原作は、詩人や作家、ミュージシャンとして活動するドリアン助川。映像作品で常に観客­を魅了する樹木の円熟した演技に期待が高まる。
(C) 2015 映画『あん』製作委員会 / COMME DES CINEMAS / TWENTY TWENTY VISION / ZDF-ARTE
作品情報:http://www.cinematoday.jp/movie/T0019740
公式サイト:http://an-movie.com/
配給:エレファントハウス

予告やあらすじを踏まえ、これは観ておくべきだと思ったのだけれど、

実際に映画館で見るまで、しばらく時間が経ってしまった。

大き目の映画館での上映が終わるなか、やっぱり映画館で上映しているうちに観たいと思ったのは、

映画の原作、小説「あん」の著者であるドリアン助川氏のインタビューを拝見したからだ。

「映画「あん」で問いかけた「生きる意味」とは 原作・ドリアン助川さんに聞く」

 

バンド解散後、ニューヨークに渡って別のバンドをやってたけど、2002年9月に日本に帰って来た。仕事はない。本を年4冊出しても、初版で終わっちゃうと年収200万円にもならないんだよね。子供の学費を払えるかどうか、ぎりぎりの生活でした。多摩川の土手にあるアパートで家族3人暮らしていて、あるとき気づいた。回りは高級住宅街だけど、俺には何もない。もう「所有する人生」なんて今後ないだろうという自由さ。「あっ、この多摩川は俺のものだ」。なんだ、世界ってもともと与えられてるじゃん。

地球外生命は見つかっていない、俺たちは宇宙でかなり孤立した存在らしい。ではなぜ生命が存在するのか。宇宙は認識する主体がいなければ消滅してしまうからという「人間理論」です。多摩川の土手を自転車で行ったり来たりしているとき、実感としてそれがわかった。

 

助川氏本人の体験から得た体感には、この著書の主人公である徳江さんの言葉に通じるものがある

「この世界を見るため、聞くために生まれてきた」

それは、徳江さんをアルバイトとして受け入れた店主の千太郎を救う言葉であり、生き方、在り方なのだろう。

弱者というのは、徳江さんのように「罹患者」として隔離されることはもちろんだが、

千太郎のように、罪を犯し、他者に大きな借りがあることで、自らの人生を他人に委ねなければならない生き方も、弱者といってもいいのではないか?

弱者とはつまり、他人や社会によって、自らの自由な生き方を必要以上に阻害されること。

この世界との断絶すら感じるその閉塞感に加え、徳江さんに対する社会的差別を目の当たりにした当事者として、弱者であるアルバイトスタッフを守ることができない店主として、千太郎は苦しむ。

申し訳なさを抱えながら、あるきっかけで徳江さんの住む場所を千太郎は訪れ、「らい」病患者が隔離されていたその場所に、苦しみを抱えながら生きてきた人々と時間があること知る。

その人生に何を見ていたのか?聞いていたのか?そして何を考え、何を望んでいたのか?

その苦しみを自分の苦しみに重ねながらも、徳江さんのいう

「私たちは、この世界を見るために、聞くために生まれてきた」の言葉に救われる。

この世界を見るために、聞くために。

それはただ、この瞬間の世界を慈しむように生きる。ちょうど桜の木々を見上げる徳江さんの姿そのものだ。

それだけでいい、何かになろうとしなくても、何にもなれなくても、ここにただ在るだけでいいのだ。

そう思えることは人間を、弱者や社会、世間という言葉や価値観を越えるひとつの「強さ」を見出してくれる。

強くあろうとしなくてもいい。ただただ感じて生きる。

それは千太郎だけでなく、この世界に生きる人々を救いうる言葉だと思う。

 

 

参考図書

【長編小説】中村文則「教団X」世界の端から端、人間の奥の奥、フィクションがノンフィクションに出現する物語

 
 
 

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テレビで紹介されてから、気になり書店を覗いたが、そのお店には在庫がなく、しばらく諦めていた本。

そのことを覚えていた奥さんが
「辞書みたいに分厚いよ」
と重い思いをして買ってきてくれました。感謝。

確かにそれは辞書のようで、以前にこの分量を読んだのはいつだったかと考えるほど今の自分にとっては分厚く、読むことに少し勇気がいる量だった。

結論から言うと、読み始めて3日で読んだ。具体的に言うと10時間くらいだったろうか。

その分厚さこそ、物語の世界観を担保する文量に相応しい量だったと読後のいまは納得している。

この物語の世界観とは、筆者あとがきから引用すると

“世界と人間を全体から捉えようとしながら、個々の人間の心理の奥の奥まで書こうとする小説”

とあるように、読者が想像する世界観という言葉では括れないほど、広範囲で、奥行きがある。

世界とはなんだろうか?

アマチュア思想家を名乗る松尾。松尾の思想を慕う人々。松尾の思想の一端を聞ける講演は、何千年も前の宗教の教えと最先端の科学的見地が重なる実例がいくつもあると説く。

“その実験では、指を動かそうと反応した0.35秒後に、意識、つまり「私」が指を動かそう、という意志をもつ。実際に指を動かしたのは、その意識、つまり「私」が指を動かそうと意志をもってから0.2秒後です。
~つまり意識「私」というものは、決して主体ではなく、脳の活動を反映する「鏡」のような存在である可能性があるのです。”

“「<われを考えて、有る>という<わせる不当な思惟>の根本をすべて制止せよ」
ブッダさんは科学的な実験もせず、脳も解剖せず、ただ意識を見つめ瞑想し続けることで、この意識「私」が本当は実体のないものだと気づいたことになるかもしれません。”

“銀河が1000億個あると言いましたが、この全体を遥か遥か遠くから見ると、どことなく蜂の巣のようになっているのがわかっています。~この構図を見ていると、あるものに似ているように感じるのです。実は脳の神経細胞です。”

科学と宗教。対立するように見える二つの目指すものや、これまで辿ってきたものはどうやら同じものかもしれない。

人間が科学の世界で辿りついた現在の答えは、この世界は素粒子の集合であり、人間もそれに違わないということ。

素粒子という人間の構成物質は解明できたけれど、意識や心という人間特有の存在の不思議さはいまだ解明されていない。

人間の心理の奥の奥とはどんなものなのだろうか?

そして人間の心を知る上で欠かせない宗教とはなんだろうか?

教団X。そこは、かつて松尾と同じ師の元にいた沢渡を教祖として崇める宗教組織。ある事件を起こしてからは身を潜めながら活動を続ける。教団Xの教義のひとつは、性行為を解放すること。そこでは誰もが性欲を解放する時間と場所が提供される。

かつての同門ではあるけれど異なる思想の2人。そのもとに集う、彼らを慕う人々、崇高する人々が交差する物語。

人は、心の奥で孤独感や飢餓感を抱えながらも、家族や友人、恋人など人間関係の豊かさや、神のような信仰心をを持つことで、なんとか光のある場所に立てているのかもしれない。

では、人間関係が途切れ、信じる神が不在であると知ってしまった時、人はどうすればよいのか?

ここには、孤独感、飢餓感と向き合わざるを得ない人々を惹きつける松尾と沢渡。そして彼ら2人が見つめる神と人間の存在価値が提示される。

松尾は、この世界のシステム全体を神として捉え、その全体のなかにある多様性を愛し、生きることを肯定する。

沢渡は、人間の知性を越える存在である神に惹かれながらも、神でさえ癒せない孤独感を試すように性衝動を解放し、怠惰の究極である破滅を望む。

人間の奥の奥、つまり、光が当たらない場所を言語化すること。

それこそが作家の仕事だと思うし、文学の存在理由だと思う。その姿勢と作品に感嘆。

 

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