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概要 魚屋店主・前田尚毅の仕事に密着
「前田の手にかかると、魚が劇的に旨くなる」
今、国内のみならず、海外の一流料理人たちがこぞって魚を欲しがる魚店がある。静岡県焼津市にある「サスエ前田魚店」。5代目店主の前田尚毅はその目利きの正確さに加えて、誰にもマネの出来ない独自の鮮度コントロールの技術で魚の旨味を飛躍的にアップさせるとして、香港やマカオ、ニューヨークなどの有名レストランからもオファーが絶えない。
魚種や魚体の大きさはもちろん、乗っている脂の量によっても締め方を変え、輸送時間や荷を積み込む際の向きまで徹底的にこだわる前田。彼の手で鮮やかに下ろされ切り身となった魚が、まな板の上でまるで生きているかのようにピクピクと動きだす様は驚くよりほかない。
番組では、魚の旨味を最大限に引き出す前田の代名詞「脱水」と言われるスーパーテクニックを徹底取材するとともに、この時期限定の幻の鰹“もち旨鰹”を追い求める前田に密着する。「鮮度」「温度管理」「食感と旨みを引き出す前田の技」という三拍子が完璧に揃って初めて完成するとされるこの鰹、一流料理人達をして「まさに脳に刺さるような旨さ」と絶賛されるが、果たして取材中に出会う事ができるのだろうか。
177センチ94キロ、角刈り頭と巨体を揺らしながらひた走る43歳の「魚屋道」を追った。
公式サイト魚屋店主・前田尚毅のプロフィール
1974年、静岡県焼津生まれ。この地で60年続く老舗「サスエ前田魚店」5代目。県立焼津水産高等学校時代には、競りの記録係を務めるなど魚に関わるアルバイトに勤しみ卒業後、本格的に仕事をスタート。ミシュラン三ツ星の「鮨よしたけ」、The World’s 50 Best Restaurants 2018で17位の「傳」、2013年のボキューズ・ドールで世界3位に輝いた浜田統之が料理長を務める「星のや東京」など、国内外の一流飲食店に焼津から魚を納める。魚一筋で趣味は魚を食べること。こわもての風貌だが、売るために買った魚が可愛くなって店の水槽で飼い始めるなど意外過ぎる一面も。家族は妻と2人の子供。43歳。
「彼は変態ですね」魚屋店主・前田尚毅について
水揚げされたカツオを睨み。魚に触れるだけで、男はその食生活まで見抜いてしまう。
「これは胃袋が膨らんでる。なかに小魚が入っているけどまだ消化されてはいないですね。」
前田尚毅。彼が買い付け仕立てた魚はいま錚々たる名店から引く手数多だ。
「彼は変態ですね。」ある名店の店主はそう語る。
彼の魚は、食通の間で評判が広まり、半年先まで予約が埋まっているという静岡の天ぷら店も前田の魚以外は使わない。
主曰く、店の人気は前田との共同作業はあってこそみんなが食べに来てくれるそうだ。
「僕ららどういう料理を提供しようとしているのか。一緒に考えてそれに合った魚を提供してくれる点が一番違うと思いますね。」
前田の魚を求める料理店は全国で200件あまり。いまは海外の名店にも出荷している。
朝の板場を解放し、ときにアドバイスも
買い付けた魚を店舗へ運び込み、仕分け作業が始まった。
顧客の顔を思い浮かべながら、素早くお送り先を決めて行く。
無論、自分の店先に並べる分も疎かにはできない。朝8時になると地元の料理人たちが続々と集まってくる。
地元の料理人はただ食材を取りに来たわけではなかった。前田の店であるその場で魚を捌き始める。なんだか不思議な光景だった。鮮度を保つには魚はそれぞれに迅速で的確な処理が必要。前田は朝の板場を解放し、ときにアドバイスも与えている。
きょうは懐石料理店の料理人に、焼き物の串の打ち方まで伝授していた。
試行錯誤を経て、前田尚毅がたどり着いたやり方。「脱水」
前田の目利きの確かさも手伝って、地元に限らず、遠方からのお客が集まる。
前田が店を任されているが板場では父親の洋さんも。
現役創業60年を数え、この4月からは長男裕久さんが働き始めた。1974年四代続く鮮魚店に生まれた。高校卒業と同時に働き始め、店を任されたのは6年前、37歳の時。
きょうは従業員30人珍しく誰かがミスをしてしまったようだ。
前田は真っ先に善後策を講じ始める。不安を胸に先方へお詫びの連絡を入れた。
卸す予定の魚を別の魚に変更する依頼。その魚に近い味わいがある魚に前田のある仕立て「脱水」を施して対応させてもらうことに。
脱水。詳しくは企業秘密だが、まな板に切り身を乗せ、塩を振る。塩には水分を抜く作用がある。その量と時間を微妙に調節して、魚の食感と旨みをコントロールしている。
脱水は、試行錯誤を経て、たどり着いたやり方。
前田の腕に全幅の信頼を置く東京の高級料理店は魚の変更に何一つ文句を言わなかったという。
店のミスはむしろ信用率を高める好機になったのではないか。
仕事が一段落し、家に帰ったのは夜の7時。子供がいる驚いたことにまだ仕事があると言う。
前田が足を向けたのは、懐石料理の店。今朝、串焼きのコツを教えた料理人のお店。魚料理を模索しているその一つが金目鯛の鱗焼き。これも前田のアイデアだそうだ。
直接料理人の声を聞くことを大切にしている
4月のある日、板場の作業着とは打って変わった服装で東京に行ってきた。
折を見ては得意先を回り、直接料理人の声を聞くことを大切にしている。
ミシュランで例年のように三ツ星を撮り続けている鮨よしたけ。
2年前にオープンした日本旅館星のや東京の料理長とも懇意にしていた厨房で切り分けてくれたのは前田が送ったカツオ。
自分の魚がどのようにお客に出されているのかこればかりは直接は足を運ばなければわからない。
そのお店のスタッフがサプライズで、前田の顔を印刷したTシャツを見せてくれた。前田Tシャツ。前田が愛されているのが伝わる。
魚の眠っている旨みを引き出すのが自分の仕事ー魚屋店主・前田尚毅
電話に色めき出す。前田が急いだ先は御前崎漁港。地元でも珍重される上物が水揚げされているらしい。駿河湾の深海でとれた鰹。申し分なかった。キラキラしている地元ではもち鰹と言われている上物だ。
迷いなく買いつけた鰹。勝負は温度管理。2台のケースはあえて氷を少なめにして、店に着く頃には全て解けるようあらかじめ計算している。
ここから先は時間との戦いだ。前田はモチ旨鰹と名づけていた。
包丁さばきはめっぽう素早い。眠っている旨みを引き出す最大のポイントはこれを冷やす時間にあるという。
冷蔵室に20分。切り身には芳醇な味が膨らみ封じ込められる。ただし長くは持たない地元限定の味覚だった。
カツオの水揚げ日本一で知られる焼津でもそうは巡り会えない逸品。
駆けつけた料理店が次々持ち帰って行く。
その一件、付き合いの長いイタリアンのシェフはモチ旨鰹のアレンジを心得ていた。
本日のイチオシはダイナミックな厚切りでわずかに醤油を絡ませ、ケッパーと玉ねぎのソース、それに大葉を添える。お客の反応が楽しみだ。
前田は店の奥で魚を飼育している。買い付けた魚が可愛くなり飼っているのだそうだ。前田は変態というより魚をただただ愛している男だ。
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