「きみはいい子」 この世界で生きていくための大切な宿題

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「きみはいい子」

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

桜が一本、頼りなく植わっている桜ヶ丘小学校を中心に、

子供や大人に隔てなく、

家族への憎しみや他人への愛情を通して、

ひとと関わることの怖さや尊さを物語る。

 

 

幼児虐待や学級崩壊といった問題を通して愛について描いた中脇初枝の小説を基に、『そ­このみにて光輝く』などの呉美保監督が映画化したヒューマンドラマ。学級崩壊をさせて­しまう新米教師、親からの虐待を受け自身も子供を虐待する母親、家族を失い一人で暮ら­す老人といった老若男女が、現実と葛藤しながらも生きていく姿を映す。出演は、『軽蔑­』などの高良健吾や『そして父になる』などの尾野真千子をはじめ、池脇千鶴、高橋和也­ら。奥深いストーリーと共に、実力ある俳優たちの演技合戦が楽しめる。
(C) 2015「きみはいい子」製作委員会
作品情報:http://www.cinematoday.jp/movie/T0019303
公式サイト:http://iiko-movie.com
配給:アークエンタテインメント

懐かしく、怖い。

懐かしいという言葉が温かい言葉に感じていた自分には、

この映画によって、痛く冷えた言葉であることも思い出した。

ここにいる人々は、

映画の中の登場人物といったフィルターを通り越して、

その懐かしさでもって僕らの胸を刺してくる。

直接でも間接的でも、

この人たちがいた状況や心象に似た気持ちを抱いたことがない人はいないのではないか?

少なくとも自分には、痛々しい懐かしさ、寒々しい懐かしさを覚えながら見ていた。

例えば

理不尽に怒られること

親の顔色を伺うこと

謝ることでその場をやり過ごすこと

身体的特徴や生理現象でクラスでのポジションが変わること

声の大きい人が優位に反対は劣位になること

これらに言えることは

他人によって否応なしに自分と周囲の関係を決定づけられる瞬間がある

ということだと思う。

それは時に怖く、辛く、痛いものだ。

恐怖映画が死を思わせる描写によって怖さを描くとしたら、

この映画は生きることそのものの辛さを描いた怖さというのか。

生きること、他者と共生していくことの怖さが描かれている。

途中、何度も目を背けたくなったのは、

普段はその怖さから目を背けていることの表れだ。

過去に子どもだったとして、

未来に親になるとして老人になるとして、

多かれ少なかれ、この怖さが訪れていた、または訪れる可能性があることを思う。

その可能性は同時に、

被害者でなく加害者として、

怖さを受ける側でなく与える側になってしまう可能性も含み、さらに思い戸惑う。

 

「他者」と関わることの怖さを

当人だけで乗り越えることが出来ないこともあるとき、どうすれば乗り越えることができるのか?

ひとつの答えとして示してくれるのは、

これもまた他者による力が大きいということ。

他者によって受けた疲れ痛み辛さを癒すのもまた他者であるということ。

象徴的なワンシーンがある。

教師がクラスをまとめることに疲れ帰宅すると、甥っ子が、頑張れ、とギュッと抱きしめるシーン。

教師はこの時の、

抱きしめられることで感じた不思議な気持ちを感じてほしくて、

クラスの生徒たちにある宿題を出す。

 

それは、家族に抱きしめてもらうこと。

 

できない、恥ずかしいと言っていた生徒たち。

翌日のクラスには、

宿題をしてきた生徒たちの幸せな表情と抱きしめられた不思議な気持ちで満ちていた。

不思議な気持ちについてみんなで言葉にしていくクラスには、

一瞬ではあるけれども、空気がひとつにまとまっていた。

抱きしめられること

優しくされること

愛されること

それは子供はもちろん、大人でさえも同じように

人の心を癒す力がある。

みな誰かに優しく愛されたい。

その気持ちを同じように自分以外の人に与えてあげてほしい。

教師は、問題も正解もない人が生きていくうえで最も大切な宿題を生徒に残したと思う。

 

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

誰かが誰かを傷つけても

誰かが誰かを癒やす世界が、きょうもそして明日もやってくる。

 

 

 

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