【おすすめ短編小説】「とかげ」 吉本ばなな 秘密を共有することでふたりはより深くなる【あらすじ感想】

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吉本ばなな著

「とかげ」

希望とまでいかないけれど確かな肯定の物語

精神科医の彼と、「とかげ」と彼に呼ばれるその彼女。

不意にプロポーズを口にした彼に対し、彼女の返事はない。

返事にかえて彼女が口にしたのは、悲しい過去とその後の秘密。

真夜中にふたりは成田山に向かいながら、悲しい過去を打ち明け合うことで、互いが強く惹かれる理由に気づく。

幼少期の暗い過去をいまでも抱える二人の、それでもいまを明日を生きていく、希望とまではいかなけれど確かな肯定の物語。

ふたりでいる理由は秘密を共有するほど増える

個人的な経験から述べると、現実は小説よりも奇なりなんて奇をてらってるとしか言えないような現実を生きている。物語に値する悲しい過去はない。それでむしろ良かったと思っているのだけれど。

たいした過去を持たないとしても、誰かを見つけてしまった直感は未だに鮮明だし、惹かれていた理由にあとになって気づかされることもある。

それは自分の内にある秘密に値しないようなコンプレックスなんかのジメジメした感情を打ち明けたり、共有したりすることで一層の気づきを得る。

希望とはいかなくても、肯定されるだけで、きょうも明日も生きていける。

そう思える確かな力をもらっている。

ふたりでいることの理由は、秘密の共有によってより増えていく。

精神科医が見せる少年のような心象のギャップ

精神科医の彼が、自身の仕事に対し語る場面。患者の内面に寄り添う、技術的に言えばシンクロするという共感を通して、患者の肯定感を高めるカウンセリング手法は時に、「ひとあたり」のように他者のエネルギーによって自身にダメージを追うケースもある。そうならないよう、適度な距離感を取りながらカウンセリングを計ることが彼の生業だ。

そんな彼でも、恋愛のさなかにみせる少年のような心象のギャップもひとつの読みどころ。

 

他の短編のあらすじは下記記事で紹介しております。

http://books365.biz/b_yoshimoto_tokage/

 

 

 

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