彼女が彼から教わる大切なこと マイインターンを観て

素直であること、可愛がられる人であること

嫁さんが観たいというから観ることになった。

嫁も知人に勧められて観ることにしたのだとか。

余談だが、嫁は人に勧められた物事を取り入れることが自分より多い。

自分と彼女を比べると、おそらく

勧められる機会が多いことと、

素直に受け入れることができる性格の違いが理由だと思う。

そもそも勧められることが多いということが、

すでに素直さによるものが大きいのではとも考える。

勧めたくなる、伝えたくなるのは、

相手が受け入れてくれる雰囲気がなければなかなか難しい。

その雰囲気が彼女には自分より多くある。

勧められることは、大きくは可愛がられることのひとつでもないか。

可愛がられるひとを羨ましく思いつつ、少しは可愛がられる人になっていければとも思う。

 

さて、レンタル店にて棚を覗くと、すべて貸出中だった。

改めて、別の日に再訪すると1本だけあった。

自分は、この映画が観たいというよりか、彼女が喜ぶ顔が見たいのだ。

迷わず借りることにして自宅鑑賞。

 

わたしを救ってくれたのは、40歳年上の“新人(インターン)”
『プラダを着た悪魔』で、恋に仕事に奮闘しながらファッション業界でキャリアアップし­ていく主人公を演じ、世界中の女性から共感を集めたアン・ハサウェイ。あれから9年、­最新作でアンが演じるのは、ファッションサイトのCEO。『プラダ~』の主人公のその­後かのような、全てを手に入れた彼女の新たな出会いと試練を描く話題作が、ついに日本­にやって来る。
舞台はニューヨーク。華やかなファッション業界に身を置き、プライベートも充実してい­るジュールス。そんな彼女の部下に会社の福祉事業として、シニア・インターンのベンが­雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールスだが、やがて彼の心の­こもった仕事ぶりと的確な助言を頼りにするようになる。そんな時、ジュールスは仕事と­プライベートの両方で思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られる──。

 

 

起業から急成長を続ける多忙な女性CEOの部下に、

齢70の男性がシニアインターンとして配属される。

性別、文化、世代の違いから、はじめは疎ましく思う女性は、

誰にでも好かれ仕事でも成果を出す男性に次第に心を開いていく。

仕事とは、会社とは、家族とは、

人生の多くを占めるそれらに、人は時間と愛情をいかに注げばいいのか。

上司と部下から、友人へと変化する二人の関係とともに、

「大切なことは何か」を教えてくれる映画。

高齢者が持つ付加価値

Eコマース会社が急成長を遂げたり、

女性のCEOが活躍したり、

現在のアメリカのビジネスシーンが伺えるのと同時に、

雇用環境のいち側面が映されているのではないか。

映画の主軸であるシニアインターンは、

先進国における雇用問題を解決する施策のひとつだと思う。

日本でも、ハンバーガー店が高齢者を採用するなど、

高齢者の雇用環境が変化してきいる。

高齢者の採用は、企業の社会的責任としての活動だけでなく、

業務上の経験値や、年齢を重ねることでしか出せない柔和な印象など

スキルや人柄などによる、高齢者にしか出せない付加価値がある。

この付加価値がストーリーの価値にもつながっている。

正しいことを心がける

インターンの男性は会社に馴染み、成果を上げていくなか、

WEBの事業会社において自身もWEBに慣れていくため、

facebookの登録を試み、偶然その手ほどきをする女性CEO。

プロフィールに記載する質問。

座右の銘は?

“You’re never wrong for doing the right thing.”

“正しい行いは迷わずやれ”(字幕)

“正しいことを心がける”(日本語)

男性の紳士的な態度が集約される言葉だ。

意訳のニュアンスで少し印象も変わるが、ここでは日本語版の

“正しいことを心がける”

として受け取る。

彼と行動をともにし始めた女性CEOはちょうど同じ時期、

株主から別の人をCEOにすることを提案されており、

会社を築いた自身の存在価値と

家族との時間を作ることができない母としての存在価値に

新しいCEOを据える決断に思い悩む。

先の挙げた部下の老紳士の好きな言葉である

“正しいことを心がける”

“You’re never wrong for doing the right thing.”

この言葉は、そばにいる彼女にも影響を与える指針になっていく。

つまり、彼の生き方がまわりの人々の生き方すら変えていくのだ。

その様子は、

性別、文化、世代の違いを超える、

人間の生き様というのか、本質的な問題に対するヒントを示してくれる。

正しいことを心がけるにはまず、何が正しいのかを考える必要がある。

正しさとは何か?

この問いが

大人になることであらゆる物事が複雑に絡まっていく人生において、

自分にとって大切なことは何かを整理させていく。

それは決して万人が思う正しさではないかもしれない。

しかし、本人の心の内から思える正しさとして、突き動かしてくれる。

 

 

老紳士のインターンを部下にする女性CEO。

ビジネスとしての上下関係こそあれど、

人間的、本質的な関係においては、

彼女が彼のインターンだったのかなと

鑑賞後のすがすがしさに思った。

 

 

 

 

「きみはいい子」 この世界で生きていくための大切な宿題

「きみはいい子」

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

桜が一本、頼りなく植わっている桜ヶ丘小学校を中心に、

子供や大人に隔てなく、

家族への憎しみや他人への愛情を通して、

ひとと関わることの怖さや尊さを物語る。

 

 

幼児虐待や学級崩壊といった問題を通して愛について描いた中脇初枝の小説を基に、『そ­このみにて光輝く』などの呉美保監督が映画化したヒューマンドラマ。学級崩壊をさせて­しまう新米教師、親からの虐待を受け自身も子供を虐待する母親、家族を失い一人で暮ら­す老人といった老若男女が、現実と葛藤しながらも生きていく姿を映す。出演は、『軽蔑­』などの高良健吾や『そして父になる』などの尾野真千子をはじめ、池脇千鶴、高橋和也­ら。奥深いストーリーと共に、実力ある俳優たちの演技合戦が楽しめる。
(C) 2015「きみはいい子」製作委員会
作品情報:http://www.cinematoday.jp/movie/T0019303
公式サイト:http://iiko-movie.com
配給:アークエンタテインメント

懐かしく、怖い。

懐かしいという言葉が温かい言葉に感じていた自分には、

この映画によって、痛く冷えた言葉であることも思い出した。

ここにいる人々は、

映画の中の登場人物といったフィルターを通り越して、

その懐かしさでもって僕らの胸を刺してくる。

直接でも間接的でも、

この人たちがいた状況や心象に似た気持ちを抱いたことがない人はいないのではないか?

少なくとも自分には、痛々しい懐かしさ、寒々しい懐かしさを覚えながら見ていた。

例えば

理不尽に怒られること

親の顔色を伺うこと

謝ることでその場をやり過ごすこと

身体的特徴や生理現象でクラスでのポジションが変わること

声の大きい人が優位に反対は劣位になること

これらに言えることは

他人によって否応なしに自分と周囲の関係を決定づけられる瞬間がある

ということだと思う。

それは時に怖く、辛く、痛いものだ。

恐怖映画が死を思わせる描写によって怖さを描くとしたら、

この映画は生きることそのものの辛さを描いた怖さというのか。

生きること、他者と共生していくことの怖さが描かれている。

途中、何度も目を背けたくなったのは、

普段はその怖さから目を背けていることの表れだ。

過去に子どもだったとして、

未来に親になるとして老人になるとして、

多かれ少なかれ、この怖さが訪れていた、または訪れる可能性があることを思う。

その可能性は同時に、

被害者でなく加害者として、

怖さを受ける側でなく与える側になってしまう可能性も含み、さらに思い戸惑う。

 

「他者」と関わることの怖さを

当人だけで乗り越えることが出来ないこともあるとき、どうすれば乗り越えることができるのか?

ひとつの答えとして示してくれるのは、

これもまた他者による力が大きいということ。

他者によって受けた疲れ痛み辛さを癒すのもまた他者であるということ。

象徴的なワンシーンがある。

教師がクラスをまとめることに疲れ帰宅すると、甥っ子が、頑張れ、とギュッと抱きしめるシーン。

教師はこの時の、

抱きしめられることで感じた不思議な気持ちを感じてほしくて、

クラスの生徒たちにある宿題を出す。

 

それは、家族に抱きしめてもらうこと。

 

できない、恥ずかしいと言っていた生徒たち。

翌日のクラスには、

宿題をしてきた生徒たちの幸せな表情と抱きしめられた不思議な気持ちで満ちていた。

不思議な気持ちについてみんなで言葉にしていくクラスには、

一瞬ではあるけれども、空気がひとつにまとまっていた。

抱きしめられること

優しくされること

愛されること

それは子供はもちろん、大人でさえも同じように

人の心を癒す力がある。

みな誰かに優しく愛されたい。

その気持ちを同じように自分以外の人に与えてあげてほしい。

教師は、問題も正解もない人が生きていくうえで最も大切な宿題を生徒に残したと思う。

 

子供に手をあげてしまう親

5時まで家に帰ってくるなと言われた子

自分が万引きしたことに気づかない老女

知的障がい者を育てる母

生徒や保護者にどう接するればいいか、答えが分からない小学校教師

誰かが誰かを傷つけても

誰かが誰かを癒やす世界が、きょうもそして明日もやってくる。