【おすすめ短編小説】「河童」 芥川龍之介 世界のおかしさ。腑に落ちたかどうかわからない読後感が残る。【あらすじ感想】

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芥川龍之介

河童

精神障害で収容された男が語る河童の世界。

山間の道中に男は河童と遭遇する。河童を追いかける途中に穴に落ち、気づくとそこは河童の世界だった。

河童の世界は人間と、同じような文明が存在し、同じような社会が形成されている。

ひとつ違うとすれば、河童は、人間がネガティヴと捉えることをポジティブに、ポジティブと捉えることをネガティヴに捉える。

“可笑しがることを真面目に思ふ――かう云ふとんちんかんな習慣です。たとえば我々人間は正義とか人道とか云ふことを真面目に思ふ、しかし河童はそんなことを聞くと、腹をかかへて笑ひ出すのです。つまり彼等の滑稽と云ふ観念は我々の滑稽と云ふ観念と全然標準を異にしてゐるのでせう。僕は或時医者のチヤツクと産児制限の話をしてゐました。するとチヤツクは大口をあいて、鼻眼鏡の落ちるほど笑ひ出しました。”

はじめは異世界に戸惑った男も次第に河童の世界に慣れ、河童の生き方を目の当たりにする。

河童の社会の仕組み、そこには資本家もいれば法律もあれば刑罰もあるし、音楽も詩も宗教もある。そして苦悩も自殺もある。

河童の友人トックの自死など河童の世界を目の当たりにした男は、ここにいることが憂鬱になり、人間の世界に戻る。

しかし、戻ってみればなぜか、人間への違和感、嫌悪感から河童の世界に帰りたくなる。戻りたくなるではなく「帰りたくなる」

河童の世界から遊びにくる河童たちと言葉を交わすことだけを楽しみにきょうも精神病院にいる男は、いつも来訪者にそんな話を聞かせて決まって最後にこう叫ぶ。

“出て行け!この悪党めが!貴様も莫迦な、嫉妬深い、猥褻な、図々しい、うぬ惚れきつた、残酷な、虫の善い動物なんだらう。出て行け!この悪党めが!」”

人間には精神障害とされ、河童の世界には帰れず、自身も人間を嫌悪する。

これは男の精神の話だが、男が話す河童の世界に入り込むほど、読み手が認識している人間の世界の輪郭を強く意識させると同時に、河童の世界があることを話す人間を精神に障害があると判断した人間がいて、それもまた物語として、ここに紡ぐ作家という存在がいる。それをいま読んでいる。何重もの意識がどうやら「世界」といわれる不思議。

河童の世界も変だけれど、人間の世界も変だよな。と腑に落ちたかどうかわからない読後感がある。

 

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