読書

【おすすめ短編小説】石田衣良「約束」【全編あらすじ感想】

もう一度人生を歩きだす人々におすすめしたい石田衣良の短編集

大切な誰かを失ったり、大切な自身の身体や心や夢を失ってしまった人々がもう一度大切な時間を取り戻す短編集。各編それぞれ、再生の光が眩しく照らす最後が読んでいて気持ちがよかったです。石田衣良の短編集「約束」あらすじと良かった点などご紹介します。

約束 石田衣良

友達を失う悲しみに向き合う少年の短編

幼馴染の小学4年、カンタとヨウジ。いつまでもふたりの仲が続くと思っていた矢先、不意に別れは訪れる。

【おすすめ短編小説】「約束」石田衣良 大切なひとを失った悲しみと生きるすべてのひとへ【あらすじ感想】

青のエグジッド  石田衣良

きっかけがなく悩むときに読みたい短編

“清人が目を伏せたまま、ウェットスーツスーツのポケットを探った。何かつかみだして謙太郎にさしだした。手を開くと海水でふやけたてのひらに、まだ濡れ光る白い巻貝がふたつのっていた。「これ、おみやげ」  “

息子が歩くことができなくなり塞ぎがちになってから、家族間の関係も悪くなった。ある日、スキューバダイビングと出会った家族は、息子が少しづつ自分を取り戻す。

天国のベル  石田衣良

言葉することの大切さを知る短編

2年前に事故死した夫。残された妻、尚美と2人の子供。ある日、息子の雄太が突発性難聴を患う。何も聞こえない息子がただひとつだけ聞こえる音が電話のベルだった。届くはずのない人からのメッセージと奇跡を、家族は受け取る。

届くはずのない声が息子にだけ届く。奇跡ではあるけれど、なぜか共感できるのは、大切な人の存在を私たちは「感じている」からかもしれない。夫であり父である大切な存在はその人がいまここにいることではなく、大切に想った人たちの胸のうちにいつづけてくれます。

冬のライダー  石田衣良 ‪

ひた向きさが胸を打つ短編‬ 

モトクロスに夢中な高校生は小学生ライダーにも負けてしまう下手さ加減。それでも早朝から練習に励み続ける。その姿は、ある女性ライダーの止まっていた時間を動かす。‬

女性ライダーは、おなじくライダーの夫を事故で失う。この世にいない男性へを高校生の青年に重ねてかは分からないが、モトクロスを乗ることそのものの喜びや、昨日よりも少しだけ上手く乗りこなせた嬉しさなどに、また今日や明日を生きる強さをもらう。誰かのひたむきさは誰かの胸を打ちます。

夕日へ続く道 石田衣良

たまにはさぼってもいい短編 

学校にバカらしさを感じた中学生の少年はひなが1日公園のベンチに座って景色を眺めている。ある日、いつも決まった時間に昼食を買いに行く途中に廃品回収のおじさんの仕事を手伝うことに。次第に仲良くなった二人はある賭けをする。  ‪

学校が狭く感じることは誰でも通る感覚であり、社会や大人の世界に触れることで、世の中の広さを感じワクワクする感覚もまた同じように誰の胸にもある。その間の感覚にいる高校生に対して、寛大にサボることを認めてくれる大人や地に足をつけることの大切さを説く大人に出会えることはとても貴重な出会いだと懐かしく感じました。

ハートストーン

悲しみで崩れそうになりそうなときに読みたい短編 

息子が脳腫瘍で倒れた。大きな手術を控えた矢先、奇しくも祖父も倒れた。家族を襲う悲しみのなか、祖父が病床で離さずにいた小さな石が家族をつなぐ。  ‪

いつかひとはいなくなる。生まれた時も死ぬ時もひとりでこの世界から訪れ離れていく。それでも、確かにここにいたことを家族は忘れない。言葉にはできない感情や記憶や約束をリレーしていくように続く家族という人間賛歌。

 

【おすすめ短編小説】西加奈子「炎上する君」【全編あらすじと感想】

“奔放な想像力が紡ぎ出す愛らしい物語”又吉直樹

西加奈子さんの短編、設定や物語が自由闊達にどこに転がるか、そもそも彼や彼女は人間なのか?すら分からなくなってくる。けれどもコミカルに愛らしく、紡ぎ出される物語達。それを読むことができることが唯一できる「人間」として生まれて良かったと思える人間賛歌な短編集。

 

太陽の上 西加奈子

外に出ていきたくなる短編

太陽という中華料理店の上に住み3年間家を出ていない女性。床が薄く、階下の中華料理店の店主と奥さんが住む部屋の声が聞こえてくる。性交を重ねる声も聞こえる。しかし、それは時に店主と奥さんではなく、お店のスタッフと奥さんである。性交を聴きながら、彼女はきょうが誕生日であることをふと思い出す。コミカルに強く、誰の孤独も「太陽」は照らす物語。

空を待つ 西加奈子

作家の女性は創作の合間に散歩をしてた夜道で、決して上手くは撮れていない空の待ち受け画面の携帯電話を拾った。明日交番に届けよう。そう思いながら家に持ち帰った携帯電話に「あっちゃん」からメールが届き返信してしまう。

【おすすめ短編小説】「空を待つ」 西加奈子 空を眺めるようにひとの心象を眺める短編【あらすじ感想】

甘い果実  西加奈子

ああ、好きだ。好きだ。好きだ。 私は、山崎ナオコーラに、ラブレターを書いた。長い、長い、ラブレターだった。 それが、私のデビュー作になった。 生年月日も家族構成も山崎ナオコーラと同じ。作家を目指していた彼女は、山崎ナオコーラに嫉妬と憧れを抱く。山崎ナオコーラに対する気持ちは膨らみに膨らむ。当初の寂しさや卑屈の向こうにあった愛好が、勇気とデビュー作を与える。

炎上する君 西加奈子

梨田と浜中は、高校の同級の親友、男子には学徒動員、火垂るの墓と揶揄されるほど男性にはあまり好かれないルックスと、それに反比例するような知性を持つふたりがバンドをはじめ、街なかで突如噂になった足が燃えている男を探す冒険。

【おすすめ短編小説】「炎上する君」西加奈子 彼女たちがみつけた冒険と戦闘【あらすじ感想】

トロフィーワイフ  西加奈子

“まごちゃん。忘れないで。私は、私の人生が好きよ。幸せだったと思うわ。でも、私は、生まれ変わったら、蟋蟀を捕まえたいの。鼠を爪でしとめたいの。血だらけになっても、傷を負っても、立派な馬を、乗りこなしたいのよ”

トロフィーワイフとは、男性が成功して年老いた時にこれまで連れ添った妻を捨て、若い女性を妻とすること。そんな呼ばれ方をする彼女とその孫まごちゃんとの会話。これまでの人生に後悔はない。ただ、もう一度生きるとしたら、どうするだろうか?一回性の美しさ、尊さ、愛おしさの物語。

私のお尻  西加奈子

‬ ‪”私の目から、涙が溢れてきた。‬ ‪これは、私のお尻だ。私の。私の。ああ、なのになぜ、愛せないのだろう。いいえ、こんなにも、愛している。なのに、憎くて仕方がない。‬ ‪私を決定的に変えてしまった。私のお尻。”‬  ‪

お尻のパーツモデルをする女性。そのお尻は彼女に幸せと不幸せを与えた。仕事も恋愛、そのお尻のおかげで上手く行ったが、求められていたのは、「私」ではなく、「お尻」だった事実。ある日、見知らぬ男に、自分が忌み嫌う自分のものを保管できる不思議な場所に案内されて。

舟の街  西加奈子

とことん参った時に読みたい短編

“あなたの腕は、力強く風を切ったが、風とあなたの間に境界はなかった。しばしば自分の体から意識が抜け出すことがあったが、世界と自分との境界が曖昧になればなるほど、あなたは自分の存在を強く感じた。”

途方にくれたあなたは、誰かから聞いた「舟の街」に行こうと思い立った。いつの間にか、ついてしまったその街は自分の意思のまま、いつの間にか家があり、食べ物があり、人がいる。快適なその街であなたは自分を取り戻し、再びもとの街へ戻る。

ある風船の落下 西加奈子

ひとに会いたくなる短編

身体が風船のように膨らみ、宙に浮き上がる奇病が流行する。自殺願望を抱いた人が患う仮説に、罹患者は追い込まれる。空高く浮き上がり、重力や人間関係に解かれ、ただただ浮かび続ける世界に、彼らはひとつの答えを見出す。人間賛歌。