【おすすめ短編小説】「いつも空ばかり見ていた」吉田篤弘 感想あらすじ

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今回は「クラフト・エヴィング商會」名義でも活動されている、ありそうでなかった意外な組み合わせや発想、寓話的な想像力で読者を楽しませる吉田篤弘氏の「いつも空ばかり見ていた」の各編のあらすじと感想をご紹介します。読書選びの参考にご活用ください。

短編集あらすじ

小さな町で小さな床屋を営むホクトはあるとき、吸い込まれそうなくらい美しい空を見上げて、決意する。「私はもっともっとたくさんの人の髪を切ってみたい」。そして、彼は鋏ひとつだけを鞄におさめ、好きなときに、好きな場所で、好きな人の髪を切る、自由気ままなあてのない旅に出た…。流浪の床屋をめぐる12のものがたり。

吉田篤弘
1962年、東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作および装丁の仕事を続けている。2001年、講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

各短編のあらすじと感想

 

七つの鋏  吉田篤弘

by unsplash

幼少の散髪の記憶 短編‬

小さい頃に通っていたホクト理容室。先代のおじさんがなくなり、2代目の息子さんに散髪してもらっていた。僕は愛称をこめてホクトさんと呼んでいた。つむじに指をあて、君の全ての中心と彼は言った。彼と僕の小さな記憶の物語。‬

彼女の冬の読書  吉田篤弘

by unsplash

幼馴染の終わり、恋路のはじまり 短編 

エリアシがあだ名の僕はバイト先の手帳屋が倒産。アヤトリがあだ名の彼女は冬のあいだは貯めたお金で家に籠もり読書に耽る。開かないジャム瓶の蓋を開けてくれと真夜中に電話があるような関係の幼馴染。アヤトリからの影響は間違いなく、冬のあいだは僕も読書に。ある本を読んでいると、不思議な感覚に不思議な理髪師の助言が心に響く。きょうも電話が鳴り、開かない蓋ともうひとつ二人の関係を次に進めに僕は自転車に乗った。

星はみな流れてしまった  吉田篤弘

by unsplash

いつかの流れ星の願いが叶う夜 短編

昔、流星群が流れた日、その屋台は大盛況だった。そんな偶然に騙されるまだ屋台を続ける女店主と、常連の古本屋店主。来るのは相変わらず猫だけだが今夜はいつも来る猫の代わりに理容師の男性がやってきた。あの時、流れ星に願ったことが叶う夜。

モンローが泊まった部屋  吉田篤弘

by unsplash

あの頃の自分が映る短編

撮影先に雨が降ることを待ち続けて数日間。空は真っ青な快晴が続くなかホテルのスタッフに紹介された「堕ちた天使」がいる博物館に立ち寄った。待ち時間というほんの少しの永遠が気づかせてれる短編

海の床屋  吉田篤弘 ‪

by unsplash

あの眼鏡が映してくれた世界 短編

映画の買付けを担当している女性は毎年この映画祭にやってくる。今年は不作のなか、なぜか一つ気になった作品があった。床屋の大冒険という作品。幼少期、海にいた床屋さんと波にさらわれた眼鏡のことを思い出した。‬

アルフレッド  吉田篤弘

by unsplash

綻びから滲む喜び 短編

美術館で足が止まった絵画の中の少年、それとそっくりの目をした男性が隣にいた。名前はアルフレッド。彼はその国の人なら知らない人はいない有名人。と思ったら彼はその双子の兄だった。不平等な双子の関係に別れを告げる日が来た。

ローストチン・ダイアリー  吉田篤弘

by unspalsh

カウントダウンがくれたクリスマスプレゼント 短編 

クリスマスまでの10日間、北欧出身の妻は帰省していた。そのかわり、クリスマスまでの1日ずつ小さな贈り物をおいて。娘と二人で過ごす冬と、1日の終りに開ける妻からの贈り物。それはいつかの記憶や想いを思い出させてくれる物語。ははうえ、ちちうえ、と古風な呼び名を妻に仕込まれた娘の、両親への声掛けが和みます。

ワニがなく夜  吉田篤弘

by unsplash

失くしたもの壊れたものは元へ戻っていくだけなのかもしれない 短編

どこかの国の娼婦館の男ひとりで切り盛りするアルジは、あの日、耳を切られ義耳をつけていた。それから時々、義耳が何を聴き取る感覚に襲われる。その声は、もしかしたら最近はいったある娼婦の声かもしれない。秘密を探るよう依頼された理容師が娼婦に接触すると不思議な話を聞かされる。ワニ革も枕の羽毛も元の場所を戻ろうとする。それは私も同じと。ある日、何もかもが元に戻って行く日。アルジの耳も。奇跡な世界観が楽しめます。

水平線を集める男  吉田篤弘

by unsplash

晴れ晴れとした気持ちになれる 短編

どこかの駅で誰も手にしない鞄があった。誰のものだろうかとコーヒーを飲みながら眺めていると、理容師は昔の記憶を思い出す。ある国で出会ったドンキホーテと名乗る理容師。彼と不思議なやりとりは最後に晴れ晴れとした気持ちを連れてくる。

永き水曜日の休息  吉田篤弘

by unsplash

水曜日の曇り空に読みたい 短編 

司書の彼女は夫を亡くして2年になる。それから水曜日は時間が止まったように長い日となった。図書館の棚には彼女の読みかけていた本がある。「ひとりでいることは、ふたりでいることよりも強いこと?」その一節から読み進められなくなったその本が珍しく、棚になかった。閉館後に戻されてたいその本には近くの商店街の福引券が栞代わりに挟んであった。暗く長い水曜日が少しだけ晴れ間が差し込んでくるような短編。

草原の向こうの神様  吉田篤弘

by unsplash

寓話のような不思議な理髪師の物語 短編

いつかのどこかの国には束髪士といういまで言う理髪師は厳粛な修行を経て一人前になる。幾年かに一度、選ばれたものは神様の髪を束髪するという習わしがある。一人の青年が選ばれた。

” 美しさが、しばしば悲しみと共にあるのはなぜか。私はずいぶんそれを考えてきたが、またしても私は答えを出せそうにない。美しさはいつまでも永遠であってほしいが、悲しみには終わりが必要になる。”

リトル・ファンファーレ  吉田篤弘

by unsplash

友と憧れの女性と過ごした、いつかのひととき 短編

彼女のパントマイムに見惚れて弟子入りしたホクト。まったく同じタイミングで弟子入りしたニムト。言葉こそ片言だが僕らはパントマイムで言葉を交わした。父の死で国に戻り理髪店を引き継いだホクトはたまたま見た新聞に彼女の死を知った。友との再会にまた違ったはじまりを静かに受け入れる時間が流れる。

“「何かになるのではなくて、その何かが自分の中に満ちてくるのを待てばいい」先生は何度繰り返しそう言ったろう。”

 

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